仕事やアルバイト、学校のプロジェクトなどで、特定の人しかやり方を知らなくて困った経験はありませんか。ベテランの先輩がいなくなると業務が止まってしまうような状況は、組織にとって大きなリスクです。
こうした問題を解決し、組織全体の力を高めるための手法がナレッジマネジメントです。
この記事では、ITパスポート試験でも頻出のナレッジマネジメントについて、初心者の方でもイメージしやすいよう具体例を交えて解説します。
ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントは、個人の知識や経験を組織全体で共有し、有効活用する経営管理の手法を指します。
私たちは日々の活動の中で、多くの知識やコツを身につけます。しかし、その知識が本人の頭の中だけにある状態では、他の人がそれを活用することはできません。組織全体で知識を可視化し、誰でも使えるようにすることで、業務効率を上げたり、新しいアイデアを生み出したりすることが目的です。
ナレッジマネジメントを理解する上で欠かせないのが、暗黙知と形式知という2つのコンセプトです。
暗黙知:言葉にしにくい経験や勘
暗黙知とは、経験や勘に基づいた、簡単には言葉や図解にできない知識のことです。
例えば、ベテランの職人が持つ絶妙な力加減や、営業担当者が無意識に使い分けている言葉のタイミングなどがこれにあたります。
形式知:マニュアル化された見える知恵
形式知とは、文章や図解、数式などによって、誰にでも伝わる形で表現された知識のことです。
業務マニュアル、計算式、作成された報告書などが代表的な例です。

SECIモデルによる知識の循環
ナレッジマネジメントにおいて、暗黙知と形式知をどのように組み合わせて組織の知恵を高めていくかを示したフレームワークがSECIモデルです。読み方はセキモデルと呼びます。4つのプロセスが循環することで、知識がより高次なものへと進化していきます。
共同化(Socialization)
同じ場所で一緒に作業をしたり、対話を楽しんだりすることで、暗黙知を暗黙知のまま共有する段階です。
職人の世界で親方の技を見て盗むような徒弟制度はこのステップにあたります。
表出化(Externalization)
個人の持つ暗黙知を、言葉や図、マニュアルなどの形式知として書き出す段階です。
ベテランが持つ独自のコツをマニュアルにまとめる作業がこれに該当します。この段階で初めて、知識が組織全体で共有可能になります。
連結化(Combination)
バラバラに書き出された形式知を組み合わせ、より体系的な知識体系へと整理する段階です。
個別のマニュアルを組み合わせて、全社的な業務フローを構築したり、データベースで一括管理したりすることが例として挙げられます。
内面化(Internalization)
整理された形式知を繰り返し学び、実践することで、新しい個人の暗黙知として自分のものにする段階です。
マニュアルを読んで業務をこなし、自分なりのスタイルや勘をさらに磨き上げることがこれにあたります。

日常生活でのナレッジマネジメント
難しく聞こえるかもしれませんが、身近なところでもナレッジマネジメントは行われています。
アルバイト先での引き継ぎを想像してみてください。
新しく入った後輩に、自分だけが知っている掃除の裏技を教えたり、それをメモに残して壁に貼っておいたりする行為は、まさにナレッジマネジメントそのものです。
もし、誰もが自分のやり方を秘密にしていたら、新人が入るたびに同じ失敗を繰り返すことになります。知識を共有する文化がある組織は、変化にも強く、成長のスピードも早くなります。
ITパスポート試験対策のポイント
ITパスポート試験では、ナレッジマネジメントに関して以下のポイントがよく問われます。
- 用語の定義: 暗黙知と形式知の違いを正しく理解しているか。
- SECIモデルの順序: 共同化、表出化、連結化、内面化の流れと内容。
- 目的: 単なる情報共有ではなく、新しい価値の創造やイノベーションを目指す手法であること。
過去問に挑戦!
それでは、実際の試験でどのような問題が出るのか見てみましょう。
問題1
ナレッジマネジメントにおける暗黙知の例として、適切なものはどれか。
ア:数値化された売上報告書
イ:熟練者が長年の経験で培った直感やコツ
ウ:全社員に配布された業務手順書
エ:顧客管理システムに登録された連絡先データ
解答:イ
解説:暗黙知は言葉にしにくい主観的な知識です。報告書やマニュアル、データベース化された情報はすべて形式知に分類されます。
問題2
SECIモデルにおいて、個人の持つ暗黙知を文章や図解によって形式知として表現するプロセスはどれか。
ア:共同化(Socialization)
イ:表出化(Externalization)
ウ:連結化(Combination)
エ:内面化(Internalization)
解答:イ
解説:暗黙知を外部に出して可視化するプロセスが表出化です。
まとめ
最後に、今回のポイントを整理します。
- ナレッジマネジメントは、個人の知識を組織全体で活用する仕組みのこと。
- 言葉にしにくい暗黙知と、マニュアル化された形式知がある。
- SECIモデルは、共同化・表出化・連結化・内面化の4ステップで知識を循環させる。
- 試験では、SECIモデルの各段階の意味を問う問題が中心。
知識を一人で抱え込まずに共有することで、チーム全体の成果は劇的に変わります。ITパスポートの学習を通じて、こうした組織運営の知恵もぜひ自分のものにしてください。
